セクハラ・パワハラ

パワハラ・セクハラ
(1) パワハラ
 パワハラとは、力関係において優位にある上位者が下位者に対し、精神 的、身体的に苦痛を与えること等をいいます。会社は、社員に対して良好な職場環境を維持する義務(安全配慮義務、職場環境配慮義務)を負っています。
 もっとも、上司が部下を叱咤激励するために、厳しい言葉を使って指導を行うことが一切許されないということではなく、部下が傷ついたからといって、常にパワハラにあたるわけではありません。
 会社の従業員から「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」(性的嫌がらせ)やパワハラ)を受けた場合、その従業員に対しては、不法行為責任に基づく損害賠償請求(民法709条)を行うことができます。
 また、会社に対しては、使用者責任に基づく損害賠償請求(民法715条1項本文)等を行うことができます。
 このような請求を従業員や会社に行うことにより、財産的な損害(例えば、セクハラやパワハラにより肉体的・精神的疾患に陥った場合の治療費や休業損害等)、精神的な損害(慰謝料)の賠償をさせることができます。

(2) パワハラの裁判例
 パワハラを巡って争われる訴訟では、労働者側がパワハラと主張する行為が違法と評価されるかが問題になることが多いです。
 裁判例(福岡高裁平成20年8月25日判決)では、違法性の有無について、他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は、原則として違法というべきであり、例外的に、その行為が合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で行われた場合には、正当な職務行為として、違法性が阻却される場合があると判断しています。
 抽象的な基準のため、具体的なあてはめは難しいですが、まず、暴力を伴う場合は違法性が認められる場合が多いです。例えば、他の従業員の面前で声を荒げて叱責したり、頭を定規で叩いたりし、また、扇風機の風を当て続ける嫌がらせをしたり、足の裏でけったりした事案(東京地裁平成22年7月27日判決)では違法性が認められています。
 また、暴力を伴わない場合でも、他の従業員がいる前で繰り返し罵倒した事案(東京地裁平成21年1月16日判決)では違法性が認められています。
 他方で、病院の事務職員の事務処理上のミス等に対して、時に厳しい指摘、指導をしたという事案で、かかるミスは正確性の要求される医療機関においては看過できず、患者の生命、健康を預かる職場において、管理職が当然なすべき指示の範囲内であり、違法とは言えないとした事案(東京地裁平成21年10月15日判決)があります。

(3)セクハラ
 セクハラとは、セクシュアル・ハラスメントの略語であり、簡単に言えば、「性的嫌がらせ」といった意味で広く使われていますが、使う人によってそのニュアンスは様々です。
 法律では、職場における「セクハラ」について、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と規定しています(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第11条)。
 一般に「セクハラ裁判」と言われているのは、民事訴訟により加害者等に対して損害賠償請求を求めているものであり、加害者に対しては、不法行為による損害賠償請求(民法709条)や精神的損害による慰謝料請求(民法710条)、また事業主等に対しては、法人の不法行為による損害賠償請求(民法44条)、債務不履行による損害賠償請求(民法415条)、使用者責任に基づく損害賠償請求(民法715条)を行うものが大半となっています。

         取扱い案件例
• セクハラ(条例違反)での告訴・損害賠償請求
• 特別法での告発




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