交通事故

交通事故
(1) 交通事故の被害者・事故直後からの対応
 交通事故の被害者になることは、誰にでも起こりうる出来事です。交通事故の被害者になってしまうと、身体的・財産的に大きな損害が発生します。
 後遺障害が残り、それまで従事していた仕事ができなくなるなどの深刻な損害が生じると、被害者のみならず家族の生活にまで重大な影響を及ぼします。当然、被害者の精神的ダメージも大きくなります。
 私には、交通事故の被害者が適正な治療を受けることができ、また、適正な補償を受けることができる社会にしたいという思いがあります。
適正な治療を受けることができ、また、適正な補償を受けるためには、以下で述べますが、事故直後・治療中・後遺障害認定前から、できるだけ早い段階から相談をお取り扱いすることが何にも増して大切です。
 損害を受けた被害者は、加害者に相当額の賠償金を請求したいと思うのが当然です。また、被害者は、加害者もしくは加害者が加入している保険会社が、自分の受けた損害を当然に賠償してくれると思うものです。
 しかし、加害者が素直に自分の責任を認めるとは限りません。また、保険会社も納得の行く賠償金を払ってくれることは多くありません。
 そのため、被害者は、交通事故により身体的・財産的・精神的に大きな損害を負った上に、加害者や保険会社との示談交渉により、さらなる精神的ダメージを受けることも多くあります。保険会社との交渉では、どちらが被害者か分からない、対応に不満があるという声もよく耳にします。

(2) 交通事故に遭ったときの確認チェックリスト
<事故直後>
・加害者の運転免許証を元に氏名・住所・本籍地を確認
・相手の車検証を確認
・加害車両のナンバーを確認
・警察へ通報
・相手の自賠責保険・任意保険を確認
・自らが加入する任意保険に事故の報告
・運転者の言い分を記録
・自動車の破損状況を写真撮影
・目撃者の連絡先確保
・過失割合の検討
・医師の診察をすぐに受けているか
・怪我をした場所全てについて医師の診察を受けているか
・労災保険が使えるか
・過失が大きい場合には健康保険を利用しているか
・人身傷害保険は使えるか
・弁護士特約に加入しているか
・壊れたものを処分していないか

<事故後1か月まで>
・警察での取扱は人身事故扱いになっているか
・病院で適切な検査を受けているか
・接骨院のみの通院になっていないか
・自身が加入する保険で請求できるものはないか
・車やバイクでの損害について納得できない過失割合で合意を勧められていないか
・車両保険の利用をすると保険料が上がる可能性があるか大丈夫か
・領収書の保管
・保険会社・警察に提出する書類はコピーをとっているか
・タクシー・病院の個室利用は必要性の証明を医師がしてくれるか

(3)保険会社の対応と3つの賠償基準
 しかし、保険会社が支払う賠償額は、裁判前の示談交渉の場合と裁判の場合で異なっています。裁判前の示談交渉では、裁判になった際の賠償額より低額の賠償額しか支払われません。交通事故による損害賠償額の算定の基準には、自賠責保険の基準、任意保険の基準、裁判基準の3つがあります。保険会社の基準よりも裁判基準で算定した方が賠償金額が高くなることがほとんどで、死亡事故や重度後遺障害が残る事故などの重大な事故になるほど、両者の差は大きくなります。

(4)弁護士に依頼するメリット
 弁護士にご相談いただければ、裁判基準により算定した金額と当該ケ-スにおける見通しをお示しできます。
 一般的に、交通事故の被害者側としては損害賠償請求に関する知識や経験に乏しいのが通常です。これに対し、示談交渉の相手方は保険会社です。これでは、被害者側の要求をとおすことは簡単ではありません。
 弁護士が被害者の代理人となった場合、保険会社に対して、裁判になった場合の賠償額を請求して、交渉を行います。交渉がまとまらなければ、実際に裁判を起こして解決することもありますが、裁判前の交渉段階で、裁判基準に近い賠償額を支払ってもらえることが少なくありません。
 裁判になる場合であっても裁判前に示談が成立する場合であっても、弁護士が代理人となって保険会社と示談交渉をすると、被害者本人が交渉をする場合より高額の賠償金を得ることができます。適切な賠償金を得ることは、本人のみならず家族のためにも重要なことです。
 保険会社から提示された示談金の額に疑問がある場合は、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。早い段階で弁護士に相談することにより、保険会社と交渉する精神的ストレスが減少するだけではなく、適切な金額の賠償金を得ることができます。「保険会社の人が言うのだから、そうなのだろう」とお考えになられたり、「早く終わらせたい」というお気持ちは良く分かります。しかし、本来受けられるはずの損害賠償金(保険金)が受け取れないことになりがちです。保険会社から提示された示談の内容に納得が出来ない場合は、弁護士に問い合わせすることをお勧めします。特に、後遺障害が認定されるような大事故の場合には、裁判をしないとしても、弁護士に依頼をして弁護士が交渉をするだけで、金額が相当上がることがあります。
 私の経験上、保険会社の提示額の2倍から6倍程度の賠償金を得たことは多いです。

(5)早い段階での相談
 最終的な示談交渉は、治療が終了した時点(症状が固定した時点)で行いますが、事故直後に受診した病院のカルテに自覚症状が記載されていなかった、症状はあったが忙しくて通院できず、通院日数が少ないなどの場合、実際の傷害や後遺障害に見合った賠償額を受けられなくおそれがあります。
 このようなことを防ぐためにも、交通事故の被害に遭った場合は、早い段階で弁護士のアドバイスを受けることが重要です。
 特に、後遺障害が残った場合は、治療費や入通院慰謝料などとは別に、後遺障害に基づく損害賠償を受けることができるため、後遺障害が認められない場合と比べると、賠償総額が大きくなります。
 後遺障害に基づく損害賠償額は、後遺障害の等級によって決まるため、適切な賠償額を得るためには、適切な後遺障害等級の認定を受けることが重要です。

(6)後遺障害診断書
適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、医師に作成してもらう後遺障害診断書に必要十分な事項を記載してもらい、適切な検査結果を資料として添付する必要があります。後遺障害診断書の内容次第で、適正な等級認定を得ることができるかどうかが決まるので、後遺障害診断書は、できる限り具体的に、かつ細かな点まで自身の症状について伝え、記載していただくようにすることが重要です。
 しかし、ほとんどの交通事故被害者は、初めて交通事故被害にあった方であるため、「後遺障害診断書には何を書いてもらえばいいのか分からない」というお悩みを持たれていると思います。
 後遺障害診断書に書いてもらうことは、①傷病名、②自覚症状、③他覚症状および検査結果、主に3つあります。①傷病名については、事故当時から診断書に記載されているのですが、②自覚症状、③他覚症状および検査結果については交通事故被害者から、医師に細かく伝えていかなければ、適正な後遺障害を獲得するための後遺障害診断書作成は難しいといえます。
 特に、③他覚症状および検査結果は、適切なタイミングで、適切な病院で、レントゲンやCT、MRIを撮影しておかなければ、適正な後遺障害の等級認定を得るための他覚的所見を書いてもらうことができない可能性があります。
  医師は、療を目的として患者と接しているわけであり、後遺障害認定のために患者と接しているわけではありません。そのため、必要な証拠がないために適切な後遺障害認定がなされないということがないように、弁護士が後遺障害認定に関わる必要があるのです。
 上記の点についても、弁護士がアドバイスしますので、後遺障害が問題となる場合には、等級認定申請を行う前に、ぜひご相談ください。

(7)弁護士特約
 ご加入されている自動車保険に、弁護士費用特約が付いていれば、弁護士費用を保険会社の負担(通常は上限300万円まで)でご依頼いただけます。
 また、ご家族が加入する自動車保険の弁護士費用特約が使えることもありますので、お気軽にご相談ください。特約に加入している場合、弁護士が直
接保険会社から相談料をいただきますので、相談時に相談料をお支払いいただく必要はありません。
 特約に加入していない場合には、弁護士費用は自己負担となりますが、弁護士費用を払っても、結果として得られる賠償額が増額する場合が多いです。

 これらの点も含めて、弁護士が適切な解決方法をアドバイスします。
当事務所は、交通事故で被害に遭われた方の力になりたいと考えています。

(8)留意点<交通事故発生時>
  ア 実況見分の際の留意点
 事故の場合に、事故の当事者を伴い警察官によって実況見分が行われ、実況見分調書が作成されます。
 しかし、なかには実況見分調書が正確に作成されているのか疑わしいものもあります。
 被害者が実況見分に立ち会うことが可能な場合には、事故発生時のことを正確に警察官に伝えることを心がけ、少なくとも自分の勘違いで事実と異なった調書が作成されることがないように注意する必要があります。
 場合によっては、弁護士も実況見分に立ち会います。
  
  イ 加害者対応
 加害者の態度がひどい場合には、刑事告訴や刑事手続への参加を視野に入れて対応します。

  ウ 警察対応
 警察が被害者対応を適切に行っていない場合には、弁護士が受任して警察と交渉します。

  エ 客観的証拠の確保
 事故状況に関する当事者の言い分が異なるがあります。
 特に、死亡事故や被害者が重度の障害を負うなどして、被害者が事故
時の話ができない場合において、加害者が一方的に自己に有利なように事故状況を述べているケースも現実に存在します。
 こういった場合、事故状況を正確に再現するために客観的証拠が有力な資料となります。場合によっては、事故現場や事故車両などの写真撮影ができるといいです。

(9)留意点<入院・通院時>
  ア 医師への申告
 医師へ症状を申告するときは、痛み、症状、部位などをすべて正確に申告して、カルテに記載してもらうようにして下さい。
 事故から相当期間経過した後にはじめて症状を申告したりすると、後々の裁判などで交通事故との因果関係を争われることがあります。

  イ 証拠書類の保管
 治療のために使った費用(例:診察代、通院のためのタクシー代)に関する領収書等はすべてきちんと保管しておいて下さい。任意保険会社の求めに応じて提出するときには、コピーをとっておくほうが好ましいです。

  ウ 健康保険
 交通事故による受傷でも健康保険は使用可能です。
被害者側に一定の過失が見込まれる場合などにおいて、健康保険を使用しないと被害者が最終的に得られる賠償金の金額が健康保険を使用する場合に比べて少額となる場合があります。

(10)留意点<治癒・症状固定時>
  ア 症状固定
 症状固定とは治療を続けてもそれ以上大きな症状の改善が見込めない状態をいいます。
 症状固定までの治療費は損害として認められますが、症状固定後の治療費は損害として認められないのが原則です。
 症状固定と治療費支払いの打ち切りを巡って任意保険会社と被害者との間で争いになることがありますが、そういった場合、被害者の考えとは異なり、症状固定までの期間が長ければ長いほどよいと単純に言えるわけでは必ずしもありません。

  イ 治療費支払いの打ち切り
 治療費支払いを打ち切られた場合には、健康保険に切り替えたり、他の保険(労災保険・人身傷害保険)で支払を続けられるか検討します。
 場合によっては、受任して保険会社と交渉します。
   

(11)留意点<後遺障害等級認定時>
 症状固定後に一定の症状が残存する場合、自賠責保険ではその軽重に合わせて、1級から14級の後遺障害等級に分類されます。残存する症状が所定の条件を満たさないものは「非該当」として取り扱われます。
 後遺障害等級の判断基準は労災の場合のものが準用されていますが、労災とは異なり、診断書、画像等の書類審査で等級が認定されます。
 後遺障害等級認定は自賠責保険会社が窓口になりますが、実際には「損害保険料率算出機構」という団体が判断します。
 後遺障害等級の違いによって慰謝料、逸失利益等といった被害者の損害額に差が生じるため、後遺障害等級が何級になるのかは重大な関心事となります。
 後遺障害等級認定のポイントとしては,以下のものが挙げられます。
① 頚椎MRI画像(CT、XPではない)を取得していること
② 神経学的所見等の検査
 ジャクソンテストやスパーリングテストにおいて「陽性反応」が認められるかが重要です。
 また、深部腱反射検査で、「低下」「消失」が認められるかも重要です。
③ 症状が事故後から症状固定まで一貫して続いていること
④ 病院への実通院日数が多いこと
 等級認定を獲得するための適切な通院日数も等級認定を獲得するための要素の1つになります。自覚症状をきちんと主治医に伝えることも重要です。
⑤ 過不足のない後遺障害診断書が完成していること

  ア 後遺障害等級認定の手続
 後遺障害等級認定の手続には任意保険会社が行う「事前認定」と被害者側が自賠責保険金請求の形で行う「被害者請求」があります。両手続には以下のようなメリット、デメリットがあります。
 
●事前認定
【メリット】
 手続きを任意保険会社に任せられるので楽。
【デメリット】
 等級認定が原則書面審理であることから、診断書の記載が不十分、必要な検査がなされていないなどの場合に、被害者側のチェックが働かないまま不当な等級になるおそれがある。

●被害者請求
【メリット】
 被害者側において診断書の記載不備、検査の未施行などを主体的に確認でき、事前認定でのデメリットを回避できる。
【デメリット】
 手続きが煩雑。

  イ 後遺障害等級認定と弁護士への依頼
 遺障害等級認定手続きは当該手続きが終了したらそれで完結するのではなく、その後、損害賠償請求を行うことになります。その場合に被害者が自分で示談交渉をしても低額な任意保険会社の基準しか提示されませんから、適切な賠償金取得のためには弁護士を探して弁護士介入とする必要があります。

(12)留意点<示談案の提示時>
 相手方任意保険会社から賠償金とその明細が示されます。任意保険会社からは示談書の署名を促されますが、一度示談書にサインしてしまうと後からこれを覆すのは困難なことが多いです。
 任意保険会社(共済)の担当者によっては、賠償金の増額を見込める事案にもかかわらず「弁護士に頼んでも変わりませんよ。」等とあからさまな嘘をつく問題あるケースもあるようです。保険会社の担当者の言動を気にすることなく一度弁護士に相談してみましょう。

(13)任意保険会社の示談金額
  ア 低額な任意保険会社の示談金額
 保険会社の示談金の提示額は、保険会社内部の支払基準によって算出された金額で、裁判で認められる賠償金額より遙かに低額です。
 保険会社にとって支払保険金は「コスト」であり、その金額が低額であれば低額あるほど利益が生じるということになります。もっとも、保険会社が賠償金を支払った場合には、強制加入保険である自賠責保険からその支払基準額、限度額の範囲で回収することができるため、自分たちの支払金額を自賠責保険の支払基準額、限度額より低額にする意味はありません。
 したがって、任意保険会社の支払提示金額は、自賠責保険金の支払基準額に近い(低額な)ものであることが通常です。
 他方で、裁判においてはこのような保険会社の支払基準額に拘束されることなく、裁判での基準を参考に賠償額が決められ、保険会社の支払提示基準額より遙かに高額です。

  イ 示談金額を増額させる方法
  弁護士に処理を委任すれば保険会社は示談金額を増額してきます。
自分の加入している保険に弁護士費用補償特約が付されている場合には、負担すべき弁護士費用の負担を抑えることができます。
 賠償金の問題を解決するには、①交渉、②訴訟、③ADRといった方法があり、少しでも被害者にとって有利になるように、個別具体的事案に照らしてどういった方法を選択するか検討することが適切であると言えます。

(14)賠償問題の解決方法
  ア 示談
 示談とは、被害者と任意保険会社との間で、賠償金額について合意する方法です。
 後遺障害等級認定がなされると、保険会社から被害者宛に書面が送付され、示談金額が提示されます。被害者がその金額に同意すれば示談成立となります。

【メリット】
・速やかな解決が可能。
・弁護士に依頼しなければ弁護士費用はかからない。

【デメリット】
・任意保険会社の提示金額は裁判による損害賠償基準より遙かに低額。
・弁護士に示談を依頼した場合、示談金の一定の増額は見込めるものの、必ずしも裁判基準と同程度というわけではない。
・担当者ベースの問題と思われるが、時間を要する場合がある。

  イ 訴訟
 加害者を被告として、裁判所に訴えを提起する方法です。
 加害者に対して民事訴訟を提起すると、弁護士の手配、その他の手続は加害者側が加入している保険会社が行います。

【メリット】
・賠償基準額が最も高い。
・弁護士費用相当額、遅延損害金(年5%)を加味して支払額が決められる。

【デメリット】
・他の方法より時間がかかる。
・不確定要素、争点が多い事案では、その内容によっては予期しない結果となるおそれもある。

ウ ADR
 裁判外で、当事者の間に中立な第三者が介在して、話し合いで紛争解決を行う手続。
 ADRには民事調停、日弁連交通事故相談センター、交通事故紛争処理センターを利用するものなどがありますが、ここでは交通事故紛争処理センターについて取り上げます。

【メリット】
・訴訟よりは早く解決できる場合が多い。
・賠償基準額が訴訟の場合に近い。
・裁定がなされるとその結果は保険会社を拘束するが(一部例外があります。)被害者はこれに拘束されない。

【デメリット】
・地元に交通事故紛争処理センターがない場合不便である。
・事案によっては手続が長期化することもある。
・複雑な事案等そもそもこの手続になじまないものがある。
・訴訟と違い、弁護士費用相当額や遅延損害金(年5%)は考慮されないため、高額賠償事案では不利益が大きくなる可能性がある。

(15)自賠責保険
 自動車による人身事故の被害者を救済するため、加害者が被害者に支払う義務のある損害賠償額のうち、一定限度額を支払うことを保障するもので、法律上、加入することが強制されています。
 自賠責保険金の支払限度額は、裁判で認められる賠償金よりかなり低額になっています。例えば、傷害部分は120万円、死亡なら3000万円、後遺障害がある場合には14級~1級の等級に応じて75万円~4000万円がそれぞれ上限となっています。
 自賠責保険金は被害者が自賠責保険会社へ直接請求することができ、その手続きのなかで後遺障害等級が決められます。ただし、後遺障害等級は損害保険料率算出機構という自賠責保険会社とは別の団体が認定することになります。
 他には、任意保険会社が主体的に損害保険料率算出機構に対する後遺障害等級認定の手続をする方法もあります。

(16)無保険車傷害保険
 加害者が対人賠償保険に加入していない場合、被害者は十分な賠償を受けられないことがあります。その場合、被害者側がこの保険に加入していれば、加害自動車に対人賠償保険が付されているのと同様の効果が得られます。多くの約款で死亡または後遺障害の発生が保険金支払いの条件になっています。
 近時、無保険者傷害保険は人身傷害補償保険に加入しない場合にのみ付されたり、あるいは人身傷害補償保険の一部に実質的に組み込まれた形を取ったりする約款を採用する保険会社が現れています。こういった保険会社の保険に加入している場合には、無保険車との事故により損害が発生したときに人身傷害補償保険の支払基準(裁判基準より低額です。)でしか損害が補填されない可能性があります。
 
(17)人身傷害補償保険
 人身傷害補償保険は、人身事故によって被った損害について、被害者側の過失割合にかかわりなく保険金が支払われる保険です。自分に過失がある場合(特に過失が大きい場合)に利用価値がある保険です。
 ただ、自分に過失がある場合にも保険金が支払われるといっても、その保険金は保険約款上の算出基準に基づいて計算された金額であり、この保険約款上の基準は、いわゆる裁判基準より低額であるという点には注意が必要です。
 人身傷害補償保険金を受け取りつつ、加害者に対して損害賠償請求を行う場合には、一定の配慮を要する場合があります。

(18)高次脳機能障害
  高次脳機能とは、脳の機能のうち、知覚や運動によって得られた情報を連合することで機能する、認知、言語、記憶、行動・遂行、情動・人格等の高度の機能をいいます。そして、これに生じた障害のことを高次脳機能障害といいます。具体的には、「会話がうまくかみ合わない」、「段取りをつけて物事を行うことができない」等の症状が挙げられます。
 高次脳機能障害を立証するためには、事故後、適切な時期に適切な画像を撮影することと事故直後の意識レベルを適切に医師に記録してもらうことが必要です。
 高次脳機能障害は他の後遺障害に比べ、立証が難しく、認定を受けるためになすべき準備が多くあります。これらが十分になされず、相応の後遺障害等級の認定を受けられなかったというケースは少なくありません。 事故によって高次脳機能障害となった場合、目に見える障害ではなく、内面的なものであることが多く、検査をしたとしても「異常がある」と認められにくいため、後遺症として認定されず、適正な損害賠償を受けられない可能性があります。
 そのようなことのないようにするためには専門家による早期のサポートが欠かせません。
 事故直後では高次脳機能障害かどうかの判断も難しいですが 「頭部外傷や脳損傷(脳挫傷、クモ膜下出血、びまん性軸策損傷等)、意識障害」と診断された場合は、すぐにご相談下さい。
 高次脳機能障害を立証するには、高次脳機能障害に知識のある医師に担当していただくことが必要です。
 必要がある場合には、弁護士が担当医と直接会って、適切な要望をします。
 入院中などの理由により外出が難しい場合は、病院やご自宅の近くまでお伺いしてのご相談をお受けすることも可能です。

  高次脳機能障害は自賠責保険の後遺障害等級認定においては「脳の器質性精神障害」として位置づけられ、障害の程度に応じて、1級、2級、3級、5級、7級、9級といった等級で評価されることになります。
 労災の場合、これら等級の認定に際しては「意思疎通能力」、「問題解決能力」、「作業負荷に対する持続力・持久力」及び「社会行動能力」を評価することとされています。
 この点、労災の場合には、被害者の方を直接診ている医師の意見が反映されやすいのに対し、自賠責保険は形式基準であるため、実際の症状に見合った等級認定がなされるとは限りません。 
 この点、裁判でその点を争うことも可能ですが、やはり、最初から適切な認定を受けておくのとそうでないのとでは、後の手続が全く違います。
 したがって、適切な評価を得るために、医師には適時適切にMRIの撮影やその他の検査をしてもらう必要があるのです。
 このように「高次脳機能障害」は、交通事故問題の中でも高い専門性が求められる分野であって、専門家によるサポートが不可欠です。
 高次脳機能障害の認定の基本的な考え方として、常時介護の必要なものを1級、随時介護が必要なものを2級とすることとされています。1級や2級の認定を受けた場合には、その被害者は介護を要することが前提とされているため、将来生じる介護費用が損害として認められます。
 もっとも、それより低い等級の被害者であっても、近親者は被害者の日常の行動から目が離せないといったケースが決して少なくありません。
 近親者が日々の看視を余儀なくされていること、近親者の被害者との接し方等を具体的かつ詳細に立証することで、3級以下の被害者であっても将来介護費の賠償を受けられる場合があります。
 近親者の精神的、肉体的、経済的負担は決して少なくないため、将来介護費を損害として認めてもらうことが重要です。
 高次脳機能障害は症状固定前に適切な等級認定に向けて、弁護士のサポートを得ることは有益であり、当事務所も交通事故の後遺障害等級認定のサポートを実施しています。高次脳機能障害は是非とも当事務所にご相談ください。

(19)脊椎損傷
 脊髄は脳から続く神経線維の長い棒状の束です。成人で全長約 40cmから50cmほどあり、脊柱で保護されていて、脳と身体の連絡路の役目を果たしています。
 脊柱は頚椎 7 個、胸椎 12 個、腰椎 5 個の計 24 個の独特の形をしており、骨と骨の間に椎間板というクッションを挟んで積み上げられた柱です。
 最後の部分に仙骨と尾骨がついています。
  重度の脊髄損傷では、受傷直後に損傷部以下の脊髄の伝導機能が断たれ、下位脊髄が自律性を失ってしまう結果、運動、感覚機能及び脊髄反射がすべて消失して、自律神経機能も停止してしまいます。下位脊髄は一般的に24時間以内にこの脊髄ショックから離脱すると言われており、その時点で完全麻痺であれば一般的に改善は難しいと言われており、様々な随伴症状や合併症が現れてしまいます。
 臨床的には、麻痺の程度により完全麻痺と不全麻痺に、損傷高位により四肢麻痺や対麻痺に分類され、障害の程度に応じて、1級、2級、3級、5級、7級、9級,12級といった等級で評価されることになります。

(20)むちうち症
「交通事故前は、こんな痛みなかったのになぜ非該当なのか」、「こんなに痛いのに、辛いのになぜ14級なのか」
「むちうち症(一般的に「頚椎捻挫」、「外傷性頚部症候群」などの傷病名の診断がなされます。)。 」と診断されても、後遺障害等級が認定される可能性があります。むちうちは、後遺障害として等級認定をされた場合、14級9号あるいは12級13号に認定されます。
 非該当、14級9号、12級13号では、後遺障害の賠償金に約3倍(数百万円)も開きがあります。
14級9号は、局部に神経症状を残すものである場合に認定されます。14級9号を受けるためには、医師による神経学的所見と、被害者の自覚症状が一致していることが等級認定を得るために必要な条件です。
 12級13号の場合は、局部に頑固な神経症状を残すものである場合に認定されます。12級13号を受けるためには、医師による神経学的所見に加え、レントゲン画像、MRI画像などの画像所見が必要になります。
 後遺障害等級認定の審査を行う自賠責の調査事務所は、客観的な医学的所見である画像所見を重視します。

 後遺障害等級認定のポイントとしては、以下のものが挙げられます。
⑥ 頚椎MRI画像(CT、XPではない)を取得していること
⑦ 神経学的所見等の検査
 ジャクソンテストやスパーリングテストにおいて「陽性反応」が認められるかが重要です。
 また、深部腱反射検査で、「低下」「消失」が認められるかも重要です。
⑧ 症状が事故後から症状固定まで一貫して続いていること
⑨ 病院への実通院日数が多いこと
 等級認定を獲得するための適切な通院日数も等級認定を獲得するための
要素の1つになります。自覚症状をきちんと主治医に伝えることも重要です。
⑩ 過不足のない後遺障害診断書が完成していること

(21)交通事故と介護保険
 交通事故や傷害事件等、第三者(加害者)から傷害を受けたことが原因で介護保険のサービスを利用した場合は、「第三者の行為に係る届出書」や警察の交通事故証明書等の提出が必要です。医療分とは別に届出が必要です。
 被害者の方は、市町村へ届出書を提出された後、通常通り介護保険サービスを利用することができます。交通事故等で傷害を受けたことにより介護が必要になった場合には、被害者に過失がない限り、必要となった介護費用は加害者が負担するのが原則です。
 利用された介護サービス費用の保険給付分(総費用額の9割)は、後日、保険者である市町村が、加害者の方へ請求することになります。
 被害者と加害者との話し合いがついて示談が成立すると、その示談の内容が優先され、市町村が介護サービス費用の保険給付分を加害者に請求できなくなることがあります。
 

(22)損害についての知識(赤い本をベースに)
  ア 費用
   (あ)治療費
 必要かつ相当な実費全額。必要性、相当性がないときは過剰診療、高額診療として、否定されることがあります。
 過剰診療とは、診療行為の医学的必要性ないしは合理性が否定されるものを言い、高額診療とは、診療行為に対する報酬額が、特段の事由がないにも拘わらず、社会一般の診療費水準に比して著しく高額な場合をいいます。
 交通事故の場合でも健康保険証を呈示することにより、健康保険制度を使用することができます。なお、この場合には、自賠責の定型用紙による診断書、診療報酬明細書、後遺障害診断書を書いて貰えないことがあるので、事前に病院と相談して下さい。

   (い)鍼灸・マッサージ費用・器具薬品等
 症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向にあります。

   (う)温泉治療費
 医師の指示があるなど、治療上有効かつ必要がある場合に限り認められますが、その場合でも額が制限される傾向にあります。

   (え)入院中の特別室使用料
 医師の指示ないし特別の事情(症状が重篤、空室がなかった等)があれば認める傾向にあります。

   (お)症状固定後の治療費
 一般に否定的に解される場合が多いですが、その支出が相当なときは認められます。リハビリテーションの費用は症状の内容・程度によります。

   (か)入院付添費
 医師の指示または受傷の程度・被害者の年齢等により必要があれば職業付添人の場合には実費全額、近親者付添人は1日につき6500円が被害者本人の損害として認められます。ただし、症状の程度により、また、被害者が幼児・児童である場合には、1割から3割の範囲で増額を考慮することがあります。

   (き)通院付添費
 症状又は幼児等必要と認められる場合には被害者本人の損害として肯定されます。この場合1日につき3300円。ただし、事情に応じて増額を考慮することがあります。

   (く)症状固定までの自宅付添費
 明確な基準はありませんが、必要かつ相当な金額。

   (け)将来介護費
 医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認められます。職業付添人は実費全額、近親者付添人は1日につき8000円。ただし、具体的な看護の状況により増減することがあります。

   (こ)入院雑費
 1日につき1500円。

   (さ)将来雑費
 別の事情により異なります。

   (し)通院交通費・宿泊費
 症状などによりタクシー利用が相当とされる場合以外は電車・バスの料金。自家用車を利用した場合は実費相当額。なお、看護のための近親者の交通費も被害者本人の損害として認められます。

   (す)医師等への謝礼
 社会通念上相当なものであれば、損害として認められることがあります。なお、見舞客に対する接待費、快気祝等は道義上の出費であるから認められません。

   (せ)学習費・保険費
 被害者の被害の程度・内容・子供の年齢・家庭の状況を具体的に検討し、学習・通学付添の必要性が認められれば妥当な範囲で認められます。

   (そ)装具・器具等購入費
 必要があれば認められます。義歯・義眼・義手・義足・その他相当期間で交換の必要があるものは将来の費用も原則として認めます。
 上記の他、メガネ・コンタクトレンズ・歩行補助器具・車いす(手動・電動・入浴用)・盲導犬費用・ポータブルトイレ・電動ベッド・ギプスヘッド・水洗トイレ付きベッド・介護支援ベッド・エアマットリース代・リハビリシューズ・エキスパンダー・頚椎装具・コルセット・サポーター・義足カバー・折り畳み式スロープ・歩行訓練機・リハビリ用平行棒・歯・口腔清掃用具・身体洗浄機・洗髪器・介護用浴槽・吸引器・入浴用椅子・体位変換器・入浴担架・障害者用はし・脊髄刺激装置等があります。

   (た)家屋・自動車等改造費
  被害者の受傷の内容、後遺症の程度・内容を具体的に検討し、必要が認められれば相当額を認めます。浴室・便所・出入口・自動車の改造費などが認められている。なお、転居費用及び家賃差額が認められることがあります。

   (ち)葬儀関係費用
 葬儀費用は原則150万円。ただし、150万円を下回る場合には、実際に支出した額。香典については損益相殺を行わず、典返しは損害と認めません。

   (つ)帰国費用等
 海外からの帰国費用等を認めた事例、海外からの被害者の搬送費用を認めた事例、渡航費用を認めた事例、外国の大学への留学費・航空運賃・語学研修費等を認めた事例、事故による旅行等のキャンセル料を認めた事例、就学資金返還を認めた事例、ペットの飼育費用を認めた事例、親族の治療費を認めた事例等があります。

   (て)損害賠償関係請求費用
 診断書等の文書料、成年後見開始の審判手続費用、保険金請求手続費用など必要かつ相当な範囲で認められます。
   
   (と)弁護士費用
 弁護士費用のうち、認容額の10%程度を事故と相当因果関係のある損害として加害者側に負担させられます。

  イ 休業損害
  (あ)給与所得者
 事故前の収入を基礎として受傷によって休業したことによる現実の収入減。現実の収入減がなくても、有給休暇を使用した場合には休業損害として認められます。休業中、昇給・昇格があった場合にはその収入を基礎とします。休業に伴う賞与の減額、不支給、昇給・昇格遅延による損害も認められます。

  (い)退職者
  事故前の収入を基礎として受傷によって休業したことによる現実の収入減。

   (う)有給休暇
 現実の収入減がなくても、給休暇を使用した場合には休業損害として認められます。

   (え)事業所得者
 現実の収入減があった場合に認められます。なお、自営業者、自由業者などの休業中の固定費(家賃・従業員給料など)の支出は、事業の維持・存続のために必要やむを得ないものは損害として認められます。

   (お)家事従事者
 賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均賃金の賃金額を基礎として、受傷のために家事労働に従事できなかった期間につき認められます。
 パートタイマー、内職等の専業主婦については、現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出します。

   (か)会社役員
 会社役員の報酬については、労務提供の対価部分は休業損害として肯定されますが、利益配当の実質を持つ部分は消極的です。

  (き)無職者
 労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるものは認められますが、平均賃金より下回ったところになるでしょう。

   (く)学生
 学生については原則として認めないが、収入があれば認めます。就労後れによる損害は認められます。

  ウ 慰謝料
   (あ)死亡事故
(1)一家の支柱 2800万円
(2)母親・配偶者 2400万円
(3)その他 2000万円から2200万円
(4)ただし、上記基準は具体的な斟酌事由により増減されるべき
   で、一応の目安を示したものです。

   (い)傷害
(1)傷害慰謝料については、定められた表を使用(表は省略)。
(2)通院が長期間にわたり、かつ不規則である場合には、実日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがあります。
(3)被害者が幼児を持つ母親であったり、仕事上の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められる場合には、上記の金額を増額することがあります。なお、入院待機中の期間及びギプス固定中等安静を要する自宅療養期間は入院期間と見ることがあります。
(4)傷害の部位・程度によっては、通常の基準より20%から30%慰謝料の金額を増額することがあります。
(5)生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を伴ったとき、手術を繰り返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮します。
(6)むちうち症で他覚症状がない場合には別表Ⅰ(省略)ではなく、別表Ⅱ(省略)を使用します。この場合、慰謝料算定のための通院期間は、その期間を限度として実治療日数の3倍程度を目安とします。

   (う)後遺症
 被害者本人の後遺症慰謝料は以下の通り。
 1級 2800万円、2級2370万円、3級1990万円、4級1670万円、5級1400万円、6級1180万円、7級1000万円、8級830万円、9級690万円、10級550万円、11級420万円、12級290万円、13級180万円、14級110万円。

   (え)増額自由
 加害者に故意もしくは重過失(無免許・ひき逃げ・酒酔い・著しいスピード違反・ことさらに赤信号無視)または著しく不誠実な態度がある場合には慰謝料が増額されることがあります。

  エ 逸失利益
   (あ)基礎収入
 逸失利益の算定は、労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の昇進・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便等を考慮して行います。
 基礎収入算定の基礎となる収入は、原則として事故前の現実収入を基礎としますが、将来、現実収入額以上の収入を得られる蓋然性があれば、その金額が基礎収入となります。なお、現実収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても、将来、平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入として算定できます。

   (い)有職者
 原則として事故前の収入を基礎として算出します。現実の収入が賃金センサス平均額以下の場合には、平均賃金を得られる蓋然性があればそれを認めます。若年労働者(事故時概ね30歳未満)の場合、学生との均衡もあり、全年齢平均の賃金センサスを用いるのを原則とします。

   (う)事業所得者
 自営業者、自由業者、農林水産業などについては申告所得を参考にしますが、同申告額と実収入額が異なる場合には、立証があれば実収入額を基礎とします。
 所得が資本利得や家族の労働などの総体の上で形成されている場合には、所得に対する本人の寄与部分の割合によって算定します。
 現実収入が平均以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば男女別の賃金センサスによります。現実収入の証明が困難なときは各種統計資料による場合もあります。

   (え)会社役員
  会社役員の報酬については、労務提供の対価部分は認容されますが、利益配当の実質を持つ部分は消極的です。

   (お)家事従事者
  賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎とします。有職の主婦の場合には、実収入が上記平均賃金以上のときは実収入により、平均賃金より下回るときは平均賃金により算定します。家事労働分の加算は認めないのが一般的です。

   (か)学生
  賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、男女別の全年齢平均の賃金額を基礎とします。
 女子年少者の逸失利益については、女性労働者の全年齢平均賃金ではなく、男女を含む全労働者の全年齢平均賃金で算定するのが一般的です。
 なお、大学生になっていない者についても、大卒の賃金センサスが基礎収入と認められる場合があります。大卒の賃金センサスによる場合、就労の時期が遅れるため、全体としての損害額が学歴計平均額を使用する場合と比べ減ることがあるので注意が必要です。

   (き)高齢者
  就労の蓋然性があれば,賃金センサス第1巻第1表の産業計,企業規模計,学歴計,男女別の年齢別平均の賃金額を基礎とします。

   (く)失業者
  労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性のあるものは認められます。再就職によって得られるであろう賃金を基礎とすべきで、その場合特段の事情のない限り失業前の収入を参考とします。ただし、失業以前の収入が平均賃金以下の場合には、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の賃金センサスによります。

(け)生活費控除率
(1)一家の支柱・被扶養者1人の場合 40%
(2)一家の支柱・被扶養者2人以上の場合 30%
(3)女性(主婦・独身・幼児等を含む) 30%
   なお、女子年少者の逸失利益につき、全労働者(男女計)の全
 年齢平均賃金を基礎収入とする場合には、その生活費控除率を40%~45%とするものが多いです。
 (4)男性(独身・幼児を含む) 50%
  
   (こ)就労可能年数
(1)原則として67歳まで。未就労者の就労の時期については原則として18歳ですが、大学卒業を前提とする場合は大学卒業予定時。
(2)高齢者については平成20年簡易生命表の余命年数の2分の1と67歳までの就労可能年数のいずれか長期の方を採用します。
(3)年金の逸失利益を計算する場合は平均余命年数。

オ 遅延損害金
事故日から起算

カ 中間利息控除
(1) 中間利息控除は年5%の割合で控除。
(2) 計算方法としてはホフマン式とライプニッツ式で控除するが、福岡地裁はライプニッツ式によっている。

 
      取扱い案件例
• 死亡事故、重大な後遺障害の事故による損害賠償請求
• 交通事故とその後の医療事故により死亡した事件の裁判
• 自賠責保険の後遺障害認定に対する異議申立て
• 物損のみの損害その他損害賠償請求全般

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