相 続
(1) 問題
「遺産分割協議が進まない」、「子らがもめないように遺言書を作成したい」、「遺言書の内容を、相続人が実現してくれるか不安だ」、「他の相続人が行方不明で困っている」、「遺言により、自分だけ一切相続させてもらえなかった」、「遺産分割未了で、登記名義が何代も前の人のまま残っている」
兄弟姉妹だからわかってくれると思っていたのに、結果的にはお互い一歩も引かず「争族問題」に。兄弟姉妹同士は仲が良くても、それぞれの配偶者の意向が微妙に反映したり、長年にわたる不平等感が一気に噴出して、簡単にはいかないのが相続問題です。
将来自分が亡くなったときの相続に関するご相談、近親者が亡くなり既に紛争になっているご相談や何十年も前にお亡くなりになった方の遺産分割に関するご相談などご提案する対応策も、ご相談内容に応じて様々です。
(2)遺産産相続の対象
遺産相続の対象となる財産としては、預貯金、不動産、株式、生命保険金などがありますが、それぞれの財産をいつの時点でどのような方法で評価するのかによって、相続財産の総額が変わってきます。これらについて、専門的な知識がなければ、相当な相続分を取得することができないおそれがあります。
また、そもそも被相続人の遺産について、どのような財産がどのくらいあるのか分からない、他の相続人に情報を開示してもらえないという場合も多いと思います。
いずれの場合も、弁護士が専門的な知識と豊富な経験に基づいて、適切な対応をアドバイスします。
(3)弁護士に依頼するメリット
当事者同士で話し合いをしていると、どうしても感情的になってしまいます。被相続人が亡くなったことによって、それまで表面化しなかった親族間の問題が表面化したり、長年積もり積もった感情が爆発することも多く、厄介です。相続問題はできるだけ身内で解決するという考え方もありますが、身内であるが故に感情が絡んで解決が困難になるケースもよく見受けられます。
遺産分割の話し合いを弁護士に依頼した場合、弁護士があなたの代理人となって他の相続人と交渉を行うため、他の相続人と直接話をしなくて済むため、精神的ストレスが減少します。
当事務所は、まずご相談内容を伺った上で、どういった解決が法的に可能であるのかについて、分かりやすく丁寧にご説明させていただきます。相続人の間で紛争となることを事前に予防することも重要です。遺言書の作成など「争族」とならないためのお手伝いもさせて頂きます。
(4)相続の放棄・承認
遺産を取得するのが相続ですが、債務(借金)も相続の対象となります。プラス財産よりも借金の方が多いときは、相続の放棄をすることになりますが、その方法は,家庭裁判所に、相続放棄申述書を提出します。
相続の放棄は、3ヵ月の期間制限があったり、遺産の処分など一定の行為をすると放棄できなくなったりすることがありますので、弁護士にご相談いただければ適切なアドバイスが可能です。
(5)遺産分割の方法
法律により法定相続分は定められていますが、割合が決まっているだけなので、具体的に遺産をどう分けるのは難しい問題です。相続人の中に、生前贈与など相続分の前渡しを受けている人がいる場合(特別受益)や、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした人がいる場合(寄与分)は、その部分を調整する必要も生じます。弁護士にご相談いただければ、当該ケースにおける分割案や見通しなどをお示しすることができます。
(6) 寄与分
寄与分は、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産の給付、療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持や増加に貢献した相続人について、これを遺産分割に反映させて相続人間の公平を図るものです。
寄与分が問題となる類型としては、被相続人が行っていた事業に継続的に従事したり、被相続人の介護を長期間にわたって行っていた場合などです。
遺産分割交渉・調停では、寄与行為が特別の寄与といえるのかどうか、寄与分をどのように算定するのか、などの点が争点となることが多く見られます。
したがって、遺産分割調停などで寄与分を主張する場合には、過去の事例や社会通念に照らして、一定の寄与行為が特別の寄与といえるかどうか、これを遺産分割調停においてどのように相続分に反映させるのかを事前に検討しておくことが必要です。
実務では、寄与分として認められた場合、遺産の5~10%程度が寄与分として認められるケースが多いです。
(7) 特別受益
特別受益とは、特定の相続人が被相続人より贈与や遺贈を受けていた場合は、他の相続人との不公平をなくすために相続分から特別に受け取った分を差し引く制度です。
民法上、「特別受益」とみなされる場合は、次のとおりです。
ア 遺贈を受ける場合
イ 婚姻、養子縁組のための贈与を受ける場合
ウ 生計の資本として贈与を受ける場合
遺産分割調停では、寄与分と同様に、特別受益に該当するかどうか、該当するとしてもそれをどのように算定すべきかが争点となります。
この点は、各類型ごとに算定方法などが異なることがありますので、これまでの遺産分割調停の事例を踏まえて、特別受益に該当するかを検討することが必要です。
(8)遺留分減殺請求
最低限度の相続財産を遺族に保証する制度が「遺留分」です。兄弟姉妹以外の相続人には遺留分という権利があり、遺産を何も取得できないということはありません。
例えば、相続人が妻と子2人であった場合、妻と子らは、相続分として妻2分の1、子供たち各4分の1を有しています。 そしてその相続分の2分の1について遺留分を有しています(妻4分の1、子ら各8分の1)。この部分を侵害する遺言がなされた場合、遺留分を主張することができます。
遺留分の主張は、遺留分の侵害があったことを知った日から1年内にしなければなりません。できるだけ争いを回避するためにも、まずは内容証明を送り相手方に意思表示をすることがよいでしょう。内容証明できちんと証拠にしておかなければ、後に、遺留分減殺請求をしたのかどうかで争うことになりかねません。この請求をしないで放っておくと、遺産は遺言による処分のままになってしまいます。
(9)預金の使い込み
ア 預金の使い込み
相続財産である預金を、相続開始前後、親族の一人が口座から引き出していることはよくあります。
このとき、相続開始前は、被相続人に無断で預金を下ろしたとして、被相続人がその者に不当利得返還請求ないし、不法行為による損害賠償請求ができ、相続が開始すると法定相続人がこれらの権利を相続したとして行使が可能となります。
相続開始後は、預金は法定相続人が相続分に応じて承継するので、それを超えて利得した分について、他の法定相続人は、不当利得ないし不法行為の請求が可能となります。
イ 相手方(被告)からよくある反論
(ア)遺産の使い込みに対して、地裁で返還請求して、被告が、被相続人に頼まれて引き出した、包括的委任契約があった、などという抗弁を出したとき。
被告としては、頼まれたいきさつと、使い道の説明をします。
使い道は、それ自体合理性のあるものか、領収証等の裏付けがあるか、を中心として説明します。
この手の訴訟は、通常親族間で争われるので、裁判所は基本的に和解でまとめたいと考えます。
まず、合理性のある使い道は証拠がある限り認めて、証拠がなくとも証拠があるものから推して、このくらいは認めても相当だと心証を開示してくれます。
もちろん、当事者特に被告が全く返す意思がないときには、和解は無理ですが、被告の説明と書類の裏付けとで、裁判官もある程度の心証形成が可能なようです。
使い込みをした人の多くは、被相続人の預金通帳等を預かる立場にあった人ですから、全くの横領行為ではないことが普通なので、原告としてもある程度の譲歩をして、和解に応じるのが得策です。
(イ)被告が、被相続人の預金を取り崩したが、引き出しを依頼され、それをあなたに(またはその家族に)あげると言われたのでもらったと抗弁したとき。
この抗弁の時、使い道を説明する抗弁に比して、もらったものだから返さない、と言うのですから、被告の態度はよりかたくなです。早期の和解は難しく、証拠調べ(当事者尋問など)が行われる公算が高いです。
この場合は、裁判所は、贈与契約があったかの認定を行うのですが、親族間なので、贈与契約書など書面の裏付けがないことが多く、被相続人と引き出した人との関係、被相続人とその他の法定相続人との関係など、周辺事情で認定することになります。
そこで、原被告双方に、その点を主張させて、証拠調べしますが、やはり親族間の紛争なので、その後でも和解勧告がされることが多いです。
(10)相続税対策
遺産を相続したら、相続開始の日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。 相続した人すべてに相続税が発生するわけではありません。
基礎控除額として
3000万円+(600万円×相続人の数)
が遺産から控除されます。
また、被相続人の借金、葬式費用なども差し引かれます。残ったプラス財産に対して相続税が課税されます。
また、贈与税の課税制度には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
暦年課税制度とは、基礎控除額110万円の贈与のことで、一般的な贈与税の制度のことです。
他方、相続時精算課税制度は、2500万円までは税金がかからず、2500万円を超えても、一律20%の贈与税しかかからない制度のことです。
これらの制度を念頭に置いて、相続税対策をします。
相続、遺言の内容は非常に複雑です。
こちらに記載したのは、ほんの一部です。
詳細はお問い合わせ下さい。
取扱い案件例
• 遺産の範囲が問題となった遺産分割
• 遺産分割協議書の作成
• 家業に尽力した、親を介護したなどの事情から多めの相続を求めた調停
• 相続人財産管理人選任の申立て、特別縁故者の申立て
• 扶養の申立て
• 遺産分割審判における競売(認容事例は当時全国初)
• 遺産分割における株式・投資信託・国債等の処理
• 遺産分割に関する税務処理
• 遺産の使い込み事案(不当利得返還請求)